ナントモハヤ

明日のぼくを殺せ。昨日のきみを救うために。

長崎の話1-1

オッサンの3年前の失恋ポエムがまだトップを飾っているのはよくないのでなんか更新しようと思うんですよね。
2020年にもなって。
2010年代という時代はテン年代とかいうクソダサ呼称で呼ばれていたけど2020年代はなんか呼称あるんですかね。令和か? まあ時代の流れなんてどうでもいいじゃないですか俺たちは時代の流れに取り残された哀れな老人なのですから主語がでけえんだよ、しゅごキャラかよ。

持病がひどくてちょっと社会を休んでいるですよ。社会を休んでいるときたか、大きく出たね、大きいのは態度とその醜く膨らんだ腹だけにしてほしいね。どうしてそういううちの妹みたいな暴言を吐くの? 俺はお前自身だよ。こういう90年代ラノベのあとがきみたいな対話分口調をナチュラルに地の文にしているから頭と心の持病がひどくなるんじゃないか? 持病は皮膚なんだよな。頭と心にもあるかもしれないけどそれにより社会を休もうと思ってはいなかった。そう、あの日までは……。

というわけでもう限界だったので会社を休んで療養モードに入ったがどうせ休むのでどこかに旅行に行きたいと賢い俺は思った。エオルゼア以外の地を踏むのも悪くはないのだ。しかし俺には一緒に旅に出てくれる友達がいない。
となれば、一人旅というところが当然の帰結である。
しかし、旅行に行くとなれば行く先で車に乗りたくなることもあるだろう。だが公共交通網の発達した地に産まれ発達した地で死ぬ俺は、運転免許証なるものを持たずに産まれ、持たずに死ぬと決めている。
かつて秋葉原にゲームを売りに行ったとき、運転免許証を持たない俺は写真付きの身分証明証としてボイラー免許を出したところ「なんすかこれ、他のないすか?」と鼻で笑うようにされたあの日。運転免許証を一生持たずに死ぬのだと心に決めたのだ。エヴァンゲリオン2がたしか意外と高値で売れた。
というわけで、友達のいない俺にもなんと親がある。還暦をとうに過ぎた親父は5カ国語に長け各国で車を軽快に乗り回し湾岸戦争のときはヨルダンに、911の時はニューヨークに、311の時はお台場にいても無事に帰ってきた旅のエキスパートである。名探偵コナン風味があるがそれはさておき、親父を誘うというのが賢い旅には欠かせない。たきつければホテルや電車の予約とかもしてくれるかもしれない、ぜひ薄給中年息子への生前贈与としゃれこみ、さらに運転手になっていただこうではないかという目論みが光る。
しかしそこは実の父である、毎晩友達と遊び歩くリア充であるからとて財布や運転手として使い倒すに心が痛まぬはずがない、もしかしたら最後の親子旅行になるかもしれぬ。ここはパラサイトたる息子が親父に旅行をプレゼントする心持ちで臨もうではないか、そう決心して声をかけた。

「パパー、旅行行こう、死ぬ前に」
「――――ああ、きみが???」

 ――心が、痛まぬ。



長崎空港に着いた我々は早速レンタカーを(父親に)借り(させ)て雲仙に向かった。

「――来たことある気がするんだよな。ここ右?」
「この次の信号右」
「遅い、ナビが遅い。過ぎちゃった」
「で、いつきたの? 長崎初めてだって言ってたじゃん」
「前の車なんなんだ曲がるのか曲がらないのかはっきりしろよ煽ってやろうか」
「やめて」
「修学旅行で、この前お前が部屋を片付けていただろう。その中から俺の修学旅行の集合写真が出ててきた。平和記念公園の例のうさんくさい像(ちはや家の面々はいちいちネガティブな形容をしないと気が済まない)の前でだ。俺はそれを見るまで全く長崎に来たという記憶がなかったし、何をしたかも覚えていない。ただ、長崎空港に降り立った時に、断片的な記憶が呼び覚まされる不思議な感覚に囚われた。俺はこの地を踏んだことがある。名物もなにもなく、バスにゆられて運ばれ名所のようなところだけをみて昼飯にエビフライを食べた――ような気がする。
 わかるか、エビフライだ。俺はエビフライを食べた。そんなものが記憶に残っている。俺はエビフライのことが嫌いなわけではないが、外で、ましてや旅行先で好き好んで食うべきものではない。カキフライやアジフライなどの一流の食い物からも劣る。さらに言えば俺は『ここぞ』という魚料理を食べようというときにカキフライやアジフライをメニューに出している店には入らない。
 ともかく、俺はエビフライを食ったのだ」
「ここから山にむけてめっちゃヘアピンカーブあるから、がんばって。まるでいろは坂だゲラゲラゲラ」
「ふざけんなよお前。そう、俺に長崎の思い出はもはやエビフライでしかない。俺はそのまま一生を終えるところだった。しかもそのエビフライのことすらも忘れていたくらいだ。俺はこの旅で俺の中に新しい長崎観を作り出す壮大な使命があるのだ。――そう、いかにうまいものを食うか。エビフライなどではない、本当の食い物を――! それがこの旅の真の目的と言えるだろう! 息子よ、ここからの山道は一本道だ! 俺が長崎物産展(新宿)でもらってきた膨大なパンフレットから近場の店をあぶり出せ!」
「お父さん、小生ちょっと酔ってきたので軽いものがいいです」
「お前ほんとふざけんなよ!」

 あと、途中の「島原道路」という名前の自動車道が、ところどころ未完成で、ブツ切りのまま営業していてレンタカーのナビがいちいちそちらに誘導していくのが若干謎であった。しかもその道路は建設中なのか、それとも建設中に計画が中止してしまったのかわからない場所をいくつもみかけた。その道路が延びるべき場所に新築のマンションが建っていたりするのである。
「あれはなんですかおとうさん、利権ですか」
「息子よ、あれはただの霧だよ」
シューベルトかよ」
 そんな小粋な会話はしていない。
 
 などといいながら雲仙地獄についた。
 雲仙岳の周囲にある温泉郷というかそういう感じの場所である。キリシタンがバンバン投げ込まれたり、富裕層外国人の静養地だったりした場所らしいし、各地にそんな感じの説明があったような気がする。

 だいたいこういう風景が一面に続く。

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地獄1

 地面からもうもうと沸き立つ硫黄分多めの煙の影に見える温泉郷の景色はわりと見応えがあるなあという感じ。でも一番高そうなホテルとかすぐそばにあるんだけど設備の保守とか大変そうだし泊まったとしても臭いがきついのではないかとかそういう心配をしていました。

 硫化物の臭いでもう死にそうになるし、標高が高いので空気も薄い。

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地獄2

「はやく飯くって次いこうぜ。旅先の昼飯だ、そんなたいしたものがあるわけがない、下品で無知でしらじらしく、さりとて真新しくもない、味が濃いだけでメリハリもなにもない食い物を食ってこの地からおさらばしよう」
 親父どのは元気であるし今日も偏見に満ちていて声がでかい。いつも地元の民から殴られないか心配である。しかも酒が入ると平気でそれを地元の民の前で言う。思っていても言わないのが紳士というものである。(思ってんのかよ)

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トルコ
「これはどうですか、下品な食い物ですが。俺はこの説明文にセンスを感じずにはいられないのですが」
「ここまで下品なのは求めていない」
「さようですか」

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溶岩そば

 紆余曲折を経てこれになった。
 溶岩そばである。
 なんかえらそうな事をさんざん言っておきながら我が家の家訓その2は「麺類皆兄弟」なのである。麺類は兄弟でも人類はどうでもいいという意味も言外に含んでいるといえよう。人類は互いにいがみ合っていても麺類は裏切らずうまいのである。

 で溶岩そば。この火山っぽい場所にある食い物っぽいといえばそれっぽいやつ。2人前からスタート。ホテルの中によくある夜中に飯が食えるしゃらくさいバーみたいなところが昼に出しているやつなので、調べて行ったものの「本当にここで合っているのか?」と不安になりすぎる場所にある。
「溶岩お熱くなっておりますので触らないようにしてくださいね~~」
 悠長である。溶岩を死ぬほど温めからでてくるので異様に出てくるまで時間がかかっているが、溶岩と直接触れているそばはそんな待ち時間を取り戻すかのようにみるみる炭と化していく。そばというよりもはや前衛的なモダン焼きみたいになっている。これがミスター味ッ子だったら、梅肉ソースのしたたる先を考えなかったせいで負ける回になるところだよ。
「そば粉には当地のものを使っているんですよ~」
 店員がそう説明するもののそばがみるみる炭となっていくのでそばの香りというやつが全くもってわからない。
「いやー、いいじゃないか。意外といいじゃないか」
 親父殿はけっこう満足なようである。
「でもわりとすぐおなかいっぱいになるな~~~」
 それはおやじどのがさっきひとりでソフトクリーム食べたからではありませんかね。
「それはおやじどのがさっきひとりでソフトクリーム食べたからではありませんかね。」
 目の前の人に素直は美徳だと育てられたので、思って居ることが口にでてしまったが、耳が遠くなって来ているのできこえなかったようで安心だ

 小腹を満たしたおもしろゆかい旅行はこの後、一路キリシタン受難の地島原へと向かうのであった。

「――島原の乱ってあの、田中四郎、」
天草四郎天草四郎時貞。どこからでてきたの田中」
「それ、そいつが秀吉や家康の迫害を」
「いや、島原の乱は家光の時代、江戸時代に入ってから……」
「家光って綱吉より前?」
「3代目だよ!!!!!!!!」


 どうせこれで飽きるので島原編、長崎市街地編、軍艦島編などはかけるか微妙。
 

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旅につきもののご当地ソフト

 パパンの食べてたソフト。手焼きの炭酸せんべいをつけるのは差別化がちゃんとしていていいとおもうんだけど、この看板、ちょっとなんというか……資本の香りがしませんか……? 最近の熱海っぽいというか……。