ナントモハヤ

明日のぼくを殺せ。昨日のきみを救うために。

何もない話をする日

思考 日記

本当は、本当は書きたいものがもっと他にある。

このブログをブックマークをしてくれている人の大半が俺が毎年吐き散らすドラえもんへの愛憎を求めている気がするし。もしくは旅やラーメンや文房具の話を聞きたい人もいるのかもしれない。

しかし俺はここ数年、そう言った趣味のアップデートをしていない。

さらに言えば本職(本職？)のドラえもんでさえ、映画作品を飲み込むのでいっぱいになってしまっている状態だ。月面探査機は本当にいい作品だった。だが新日本誕生のように旧作を足がかりにもできず、宝島のように「貴様は俺のドラえもんではない！」と否定するエネルギーもない。ただ、ただ静かに、若干二次創作じみてしまいはしているが上品なドラえもんの新作映画を水のように流し込まれた俺は、この物語を、キャラクターを分解し、解説するだけの体力がもはや自分にないことに気づいた。全力をもって挑もうとした矢先、風邪をひいた。

 ともかくこれくらいしか生きていてやることもないオッサンの繰り言なれば、見苦しくても継続するが吉と思い、バッヂのトリック、見てはならない矛盾、放置されているのかわからない安易なキャラクターと世界設定。それをもってしてもエンターテイメントとして上質たらしめる要素の数々、そんな話をしたかったが、考えるほどにまとまらなくなり、出力するほどに上滑りしている気がしてならなかった。

 自分の承認欲求を満たす為にドラえもんを利用するのをやめろ、そんな声が聞こえた。わかる、しかし俺は承認欲求が満たされるならやるだろう、だが、今はもう。きみをバラバラにして一つ一つの部品をそれっぽいセリフを使って開陳したとしても、まったく空虚なのだ。

耐えられない。まったく耐えられないことなんだよ。ドラえもん。

インターネットにあげるべき長文にはツカミもノリもオチもやたらと過剰なレトリックもなくてはならない。そのはずだ、そうでなければ愚かな民衆は文章を自分達が片手間に読んでやるものと認識せず、読めない。

わかっていても、もはやそれをするだけのエネルギーがない。ただ漫然と文章を長引かせることはできる。ツイッターと同じようにすればいい。140字の軛から放たれた文章はより漫然とダラダラと続いていき、方向を見失っていく。

 読ませる能力も何もなくなった、ただ社会人という名札を得る為に籍を置いている、心底本気でない職場で日報を書いては上司に「お前の文章は何ががいてあるのかわからない」と言われる。その度に、もう何も書きたくなくなる。なにも書かないことで安心する。なにも書かなくても世界は回る。気づくと俺の周りに何か物を書き続けている人たちはほとんどいなくなっていた。ほんの少し残った彼らはある程度生きづらそうな顔をしながらもきらきら輝いている。

書くのが、出力するのが苦ではないように見える。

かつて、定期的に書いていた。わけのわからん小説や、わけのわからん感想や、わけのわからん感情を垂れ流していた。140字ではなくなんかまとまった量をまとまってない文章に乗せてとりとめもなくだ。

オチも多分なかった。意味なんてましてやあるはずもない。反応だってなかった、ツイッターのせいでなにか一瞬湧いた「俺お前のこと見てるよ」なんて泡のように発生したきまぐれのミトメラレがすべてを台無しにした。

さすがになにか書かないといけない気がする。ただそういった焦燥感がある。

にもかかわらず今の自分にはなにを書いてもいけない、なにを読ませても申し訳ない。自分が一体何様なのかおごるような思考がもたげ、いつもそこで筆が止まる。

いつも長い文章は、パソコンで書いていた。ある程度は見直した。もうそんなことをしていられない。いちいち小ネタを挟んでいられない。俺が挟む小ネタはもう古く、感性も干からびているはずだ、速度も遅いだろう、一度言えば済むことを何度も言い、一度受けた成功体験を伴うネタを何度も繰りているに違いない。

俺はそんなものを見たくないし、なれば、まさかこんなところを読んでくれている人がまだいるとは思わないが、読ませるわけにはいかないだろう。芸風や文体に成長がないとしても、監視や嘲笑が目的だとしても。

それゆえに、なにを書けばいいのかわからないということについて、今日はとりあえず書くことにした。

こんな日を待っていたのだ。ネトゲがひと段落して、人生そのものに起伏はなく、インターネットも人間関係も怠惰な足元も錆びていき、退屈に殺されるよりも外に出ることの方が億劫になる日を。暇つぶしすべてに俺自身がそっぽを向かれる日を。

だから今日は気まぐれに少しだけ書いた。もしつづいたらしばらく墓標を豪華にする作業をしたい。短い気がする。こんな文章では足りない気がしている。おそらくその思考が何もかもダメなのだ。つまらない文章を大したことない量で書き散らして。何の価値もなさそうなものを恥ずかしげもなくご大層そうに日記を書きましたよとツイートしなければならない。

とりあえず今日はこれで許してほしい。ドラえもんの話も、ネトゲの話も、甘いものの話もラーメンの話も文房具も温泉も昔話も今日は無縁だ。最後まで何の話もしなかった俺を許してほしい。